はぁはぁと、どちらのものとも知れない荒い呼吸が聞こえる。耳元でがんがん鳴り響いている鼓動は、たぶん、自分のものだろうけど。

シンは呆然と、天井の薄暗い照明を見上げていた。

その視界に、藍色の髪が割り込む。

続いて、秀麗な面差し。深い、翠玉の瞳。

「大丈夫か？」

こくんと頷くので精一杯だ。

それでもその人は優しく笑って、もう少し我慢しろよ、と囁いた。

頷く間もなく、異常に敏感になっているそこから、ずるりと入ったままだった雄芯が抜き出された。

「うぁ・・・」

ここが、こんなふうに感じるなんて、知らなかった。

知識の上ではあったけれど。わかっていて、望んだつもりだったけれど。

俺、ぜんぜんわかってなかったのかも知れない。

「シン？」

それをシンに教えた人の、翠の瞳が心配そうに覗き込んでくる。

「すまない。俺も初めてだったから。辛かっただろう？」

慰めるような声音が、自分に向けられていると知って、シンは一生懸命に首を振った。

アスランさん、すっごく優しかった。

どんなに辛いか、どんなふうにされるのか、散々議長に脅されていた。初めて同士では、お互いよくはないだろうとも。

確かに、今そこはずきずきと痛むし、体中がだるいし息も苦しいし。

それにアレがイイっていうのか、よくわからないけれど。

それでも、大好きなアスランに、こうしてもらっているだけで、ユメみたいだ。

「大丈夫です」

やっと出た声はかすれていたけれど、それでも、そうかと言って笑ってくれるのが嬉しくて、シンは喉に引っかかる声を精一杯絞り出した。

「あの、ありがとうございました！」

アスランは、虚を突かれたような顔をして、それからまた笑ってキスしてくれた。

嬉しい。やっぱり大好きだこの人。

「さて。初めての感想を聞かせてもらおうかな」

そんなシンの幸せな気分を吹き飛ばすように、朗々とした声が、すぐ側から響いた。

「・・・・っ！」

シンはまた、竦み上がる。そうだ、この人まだいたんだ。

慌てて膝を閉じて、曝されたそこを隠そうとするけれど、脚の間にはまだアスランがいて。

しかしそれを察したアスランが、すぐにそこからどいてくれて、シンにシーツをかけてくれるから、ほっとする。

「気持ちよかった・・・です。ん、はぁ」

上がった甘い声に、シンはびくりと反応した。

「されるのと、どちらが？」

深い深い、傍で聞いているシンでさえ、ぞくぞくしてくるような声。後ろから抱き込まれるように、それを耳元で吹き込まれているアスランは、ギルバートの首に腕を絡め、彼に負けない艶やかな声で、答えた。

「下手な、男とするよりは」

「おや、では私はふられてしまうかな」

「ご冗談を・・・っ、あぁ・・・」

ギルバートの指が、アスランの腰の奥に沈んでいる。

先ほど自分がされていたことを思い出し、シンはふるりと身を震わせた。

「どうやらそのようだ。どうするかね？」

「く、ださい・・・・」

膝立ちになったままのアスランの内腿を、てらてらと光るものが垂れ落ちていく。

それが、自分も使われたジェルだとわかって、シンも自分の下肢が濡れていることを、強く意識した。

ギルバートの指を受け入れて、喘ぐアスランはキレイだった。

先ほど、シンを抱いていたアスランもキレイでカッコ良かったけれど、抱かれているアスランも、キレイ。

シンは不思議な心持ちで、それを眺める。

「良い子だ」

くちっ、と、淫らな音がして、指がそこから抜き出された。

続いて取り出されたギルバートのものの大きさに、シンは息を飲む。

自分が受け入れたアスランのものも、再び兆しはじめていたけれど、それと比べてもまだまだ大きい。

アスランのでもあんなに痛かったのにと思うと、準備の短さも気になった。

あんなにいっぱい解してもらっても、もの凄く痛かったのに。それなのに。

「あっ、ああん、はぁっ、ふ」

しかし、アスランは気持ちよさそうに目を閉じて、後ろから男を飲み込んでいた。痛そうなそぶりなど、かけらもない。

本当に、ほんとうに・・・気持ちよさそうに。

「ぎ、ちょう、んっ、は・・・・」

ギルバートの上に座らされ、アスランは甘えたような声を上げて、自ら腰を揺らしている。

丁度シンの方へ投げ出された脚が、小刻みにわなないている。

その脚を掴んだギルバートが、ぐい、と大きく開かせた。

「あっ、ああ・・・」

アスランがギルバートを飲み込んでいる場所がよく見えてしまい、シンはごくりと生唾を飲む。

先ほどシンの中を抉り立てていたものも、触れられないまま立ち上がり、切なげに震えていた。

「シン」

深い声で不意に名を呼ばれ、またびくりと身を竦ませたシンは、恐る恐る声の主をうかがった。

もう、自分のことなど忘れ去られていると思っていたのに。

時折ぱさぱさと振られる藍色の髪の向こうから、橙玉の瞳がシンを見下ろしている。

「見ているのなら、手伝ってあげたらどうかね」

「っ、ギ、長・・・・」

その言葉に、アスランの方が反応した。

「初めて、で、それでは、かわいそう、ですよ・・・・」

仰け反って腕を伸ばし、無理な姿勢でギルバートの首にそれを絡める。

キスをねだる仕草に、笑って応えた男は、しかしアスランのそれに指先だけで触れ、唾液に光る唇で、シンにも微笑みかけた。

「しかしね。・・・君も、アスランを楽しませてやりたいだろう？」

ほら、おいで、と手招かれ、強く首を打ち振る人の足元に、這い寄る。アスランの入ったそこが痛んだけれど、かまわなかった。

「ぎちょう・・・！」

懇願するような、アスランの声。たまらない。

「もう一度、下でするのは無理かな？なら、口でしてあげなさい」

こくりと頷くと、シンは恐る恐る、突き上げられるたびに揺れる、好きな人のそれに唇を寄せた。

「よ、せ、シンっ」

さっき自分だってしたじゃないか。

その時を思い出し、シンはとりあえずそれを口に含んだ。

コレ、俺の中に入ったんだよな。

そう思うと、ドキドキした。

はじめ、思い切り深く咥えてしまい、苦しくなってすぐに吐き出す。

しかし、すぐに悔しくなって咥えなおす。アスランのそれも、位置を定めるために触れた脚も、ふるふると震えている。

それが、中にいるギルバートのせいなのか、咥えているシンのせいなのかはわからないけれど、もっと喜ばせてあげたいと思った。

「どうだい？アスラン」

ギルバートが、腰の動きを激しくする。

それに押されて動いたものに、またうっかり喉を突かれて苦しい思いをしたけれど、それに気づいたギルバートがアスランの腰を掴んで動かないようにしてくれたので、シンは安心してそれに舌を絡めた。

うわ、今、俺アスランさんにフェラしてる。

しかも、その人は他の男に突き上げられているのだ。

「っあ、あ、やっ、ぎ、ちょう、ああン・・・・」

俺の名前、呼んでくれないのかなぁ。

そう思い、アスランにしてもらったことを反すうする。

すぐにイってしまってよくわからなかったけれど、たしか、唇で・・・

きゅ、と吸うと、アスランの体が大きく跳ねた。

やった、と思う。

「やっ、あっ、シンっ、やぁっ・・・・」

びくびくと震える腰とソレ。シンを挟んだ脚がきゅうっと突っ張る。イイのかな、とシアワセな気分でいると、突然口の中に、ごぷりと生暖かい液体が溢れた。

「うぇ・・・・」

思わず吐き出してしまったが、橙玉の瞳に睨まれてはっとする。

やば。

慌てて、アスランのそれに再び舌を絡めた。

白いものを舐めてきれいにし、柔らかい下生えに染み込んだものも、ちゅうちゅうと吸って飲み込む。

「やめろよっ、お前・・・」

「だって」

顔を上げると、議長と目が合った。視線が、褒めてくれている。

代わりにアスランの翠の瞳が睨んでいるけれど、快感に潤みきったそれは、怖いよりも色っぽかった。

「せっかく頑張ってくれたのに、その言いようは酷いのではないかね」

「それはっ、あっ・・・・」

アスランの体が、ひくんと跳ねる。

「さあ、後は、私が愉しむ番だよ」

「は、い・・・」

アスランは、腕を伸ばして軽くシンの頭を押し、その場からどかせた。

それから、そこに両手をつき、ちいさく呻くとギルバートのものを、ずる、と抜き出した。

その仕草から目を離せないシンを、ちらりとも見ずに、体を反転させて、自分を抱く男の肩を押す。

「おや、物足りなかったのかな？」

笑いながら横になるギルバートに口付け、アスランも艶めいた笑いを洩らした。

「議長のせいですよ・・・今日は、全部、自分でやりたくなりました」

それから、ギルバートの腰にまたがり、そそり立ったものに指を添え、その上で。

「ふ、ぅ・・・・ン」

ずるずと、そこが雄を飲み込んでいくさまが、シンのいる場所からはよく見える。

「あっ、はっ、あ、あ、・・・・・」

時折身をよじりながら、男の上で身を踊らせるアスランを、シンは息を飲んで見つめていた。

しなやかな体躯が、ほのかに赤く染まりながら、淫らにくねる。上がる声はとろけるように甘く、彼の感じている快感を余すことなく伝えている。

「あっ、ふぁ・・・ふっ、くっ、あっ、はっ、はっ、はぁ・・・・」

ギルバートの大きな手のひらが、アスランの腰を捉えると、その動きが激しくなって、くちゃくちゃと淫らな音が奇妙に響く。

「自分ばかり気持ちよくなるものではないよ」

「はっ、いっ。あっ、はぁっ・・・・」

下から突き上げられ、仰け反った背中のライン、曝された喉、その、うつくしさ。

「議長っ、もうっ・・・」

「ああ。ちゃんと、締めなさい・・・っ」

「は、あっ」

アスランが自分のものに指を絡め、腰を振るリズムに合わせて扱きたてる。

シンが今さっき咥えていたものは、また質量を増して先端から雫を溢していた。

「あ、ふぁっ、ああっ・・・」

「・・・っ！」

アスランの声が切羽詰り、ギルバートも軽く息を詰める。

びくびくと震えたアスランのものが、三度目の吐精で自身の指を濡らしていた。

はぁはぁと、荒く息をついたアスランは、さすがに多少息の上がっているギルバートの上で身を折って、軽くキスをしてからゆっくりと膝を立てる。

抜き出される、雄の象徴、それを追うように溢れ落ちる、白濁の体液。

アスランに注がれたものが、自分の中から出て行くような錯覚に陥り、シンはふるりと身を震わせた。

「失礼、します・・・」

しかもアスランはもう一度身を屈め、抜き出したばかりのものに口付け、舌を使って舐め清めはじめた。

身を起こしたギルバートが、その頭を優しく撫でる。

すっかり綺麗にしてから、ずらされた下着とスラックスを戻し、ベルトを締め。最後にその上にちゅ、とキスをして、アスランはやっと、顔を上げた。

「今日は、いつもと違う君が見られて楽しかったよ」

「いえ。もう少し上手くできれば良かったのですが」

「初めてにしては、上出来ではないかね。そう思うだろう？シン」

いきなり呼ばれてとっさに顔を上げ、シンは思い切り頷いた。

「えっ、あ、はいっ」

「比べるものもないくせに、嘘つくんじゃない」

そう言ったアスランは、そのまま体を返してシンの膝裏に腕を突っ込んだ。

「え、えっ？」

背中にも腕をまわされ、ぐい、と抱き上げられる。

「うゎっ」

「っ！」

一度、脚をもつれさせ、それからギルバートを振り返り。

「すみません、シャワーをお借りします」

「ああ、気をつけなさい」

忠告は、おぼつかない足元のことを言っているのだろう。

「じ、自分で行けますっ」

「無理だよ・・・こら、大人しくしろって」

足腰ががくがくするのに、抱き上げたシンに暴れられてはたまらない。

アスランは、できるだけ急いで、浴室に向かった。

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